膨らむ図書館/ケンディ
 
庫されるたび、スペースは膨張し、
棚番号は自動的に書き換えられていく。
僕だって書物が入庫されて、増えていくことぐらいは知っていた。
寄贈図書、発見された古文書の複製、新刊本。
その程度だろう、と。いざとなったら
走っていけば抜け出せるだろうと高をくくっていた。
だが、目の前に並んでいる古い書物たちが
複製されている。たとえ入庫がなくても、
毎秒2倍に膨らんでいく。複製がさらに複製されている。
当然、新たに入庫される新刊本も、複製される。

しばらくしてあることに気づき、僕の絶望感は深まった。
「このシチュエーションは、『キューブ』を思い出すな」と僕が
発話した瞬間に、さ
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