膨らむ図書館/ケンディ
図書館員がコードを表紙に書き入れて以来、
誰も触れたことがないような本がある。
製本されてから何十年も、人の目どころか、空気に
触れることさえなかったページたちが、文字たちが、
無数に眠っている。著者以外に
意味を構成させることのなかったインクの染みの羅列だ。
だが、その意味は、著者がとうに死んでいても、
やはりどこかに在るのだ。
僕が、そのページを開いて読めば、いつでも蘇ってくる。
いつまでも、半永久的に、舞台裏に
スタンバイしている、役者たちだ。
それから、誰かが傍線を引いた本。どこの誰のか
絶対に分からない指紋、髪の毛、そして謎の書き込みたち。
だがそれは特定の
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