紫桜前線/蒸発王
敷に出ていた
やっぱりまだ3月だ
北の空気は冷たく
少しかいた汗が肌寒い
その
一面を桜の並木が覆う
月もない
暗い道で
昼間の光を吸い取ったかのように
ぼんやりと夜桜が光って
並木の向こうから一本の光の線が
こちらに押し寄せるのを見た
線を超えると
薄紅の桜の花びらが
薄紫に変わる
―紫桜前線―
強い
風
降るような花びらが
ゆっくりと
紫に変わって
手のひらに
しっかりとした
ぬくもりを感じた
わたしの ゆめは―――
す
ざ
ざざ
ざ ざ ざ
ざ ざ ざ
ざ ざざざ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)