紫桜前線/蒸発王
 
敷に出ていた

やっぱりまだ3月だ
北の空気は冷たく
少しかいた汗が肌寒い
その
一面を桜の並木が覆う

月もない
暗い道で
昼間の光を吸い取ったかのように
ぼんやりと夜桜が光って
並木の向こうから一本の光の線が
こちらに押し寄せるのを見た
線を超えると
薄紅の桜の花びらが
薄紫に変わる

―紫桜前線―

強い

降るような花びらが
ゆっくりと
紫に変わって

手のひらに
しっかりとした
ぬくもりを感じた

わたしの ゆめは―――





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