紫桜前線/蒸発王
 
  ざ
     ざ ざあああああ

かすめ取ったような
言葉が
春の風に盗られて
一瞬の邂逅

僕は一人で
桜並木を見上げていた


わたしのゆめは
    紫桜前線を好きな人と見ることです



なんて

今更


僕の初恋は
彼女だったのだと


その片割れを

亡くしたのだと



初めて知った

僕の鼻先を
慰めるように
花びらが散り乱れるから
泣いているのが
桜か僕か

解らなくなってしまった




『紫桜前線』

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