立葵/天野茂典
 
   なんという風のここちよさだろう
     体が浮いてぼくはすべてを忘れることができる
     ぼくは詩も小説もよまないでいられる
     ひたすらに通り過ぎてゆく景色を人間を眺めるだけなのだ
     他になにがあるというのだろう
     果てしもないぼくのひとり旅は流れる時間のなかで
     ただ死と直面するだけなのだ
     ミスは許されない
     ただ哲学的、技術的もんだいがあるとすれば
     それだけなのだ
     そしてバイクに乗ることは
     詩をかくことよりもむつかしい
     詩を書いて弾圧され獄死した最近の詩人を知らない

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