「 ぼくらのつめたい亡命都市。 」/PULL.
 
列ぶ。みんなこころの中では誰ひとり、列びたくはないのだけれど、この街では誰もが亡命者で、もうどこにも亡命することができないヒコクミンだから、みんな誰ひとり、これ以上ヒコクミンにはなりたくなくて、黙って、一直線にどこまでも、列ぶ。
 ヒコクミンの列は誰も喋らない。みんな誰かが喋り出して、それを誰かに密告しようと、誰もが黙って、待って、いる。




三。


 ヒコクミンは喋らない。だからヒコクミンはヒコクミンの声を、知らない。




四。


 時折、空を鳥が渡り、紙が落ちてくることも、ある。が、誰も、誰かの見ている前ではそれを、拾わない。配給の終わった後、誰も
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