「 ぼくらのつめたい亡命都市。 」/PULL.
一。
この街ではつめたくて、誰もが当然のような顔をして、歩いて、いる。ぼくらは他人のふりをするのが得意だから、みんなすぐに誰かに成り切って、誰にも知られないように、暮らして、いる。
誰も、誰が生きているのかも知らない。朝、知らない誰かがひっそりと通りの片隅で倒れて、いる。そうしてぼくらははじめて、ぼくら以外の誰かが生きていると、知る。
二。
この街では配給は週に一度、白地に赤く染め抜かれた広場で、ある。ぼくらは誰に教えてもらうこともなく、集まり、列ぶ。ぼくらは礼儀正しく生まれついたものなので、誰も列を乱さず一直線に、列ぶ
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