失われていく題名/秋津一二三
「それから先」
僕たちは作用する
支点も力点も失った後
歩くのは振りで事足りる
「慣性」
願はない いらない
だから叶わない 叶えようがない
されど義は尽くす
「あらたか」
湿っぽくて埃くさい
汚れではなく沁み
眠りの誘因と
「納戸の記憶」
背に隠れていた
なんていえばいいか教えられるまで
隠れつづけていた
「挨拶を」
過ぎた幾歳を数える優しさもなく
再会は不意に
袂は意志で
「やがて懐かしき人」
秘め事は秘められた
まま 鈍く光る
君 あかしたもうことなかれ と
「ないしょだよ」
国境は横たわる海の何処か
内と外を分かつのは海
それを知らせる
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