失われていく題名/秋津一二三
 
 どちらだろうね と笑った
「情に熱い」
居酒屋の外には草臥れた犬
惨めを体現する項垂れ
一時の慰みを持ち込める布団はない
「悔悟と犬」
無意識を共有した夢で
今日は良いお天気ですね と頭を下げた
現実に置いて行かれない認識
「ぼっち」
逃亡を教義に上げたカルトの指導者は叫んだ
信仰から逃げよ 逃げることから逃げよ
逃げよ 逃げよ 逃げよ
「信じてはならない」
はは 救えねえ
詩が書けるから何だってんだい
その詩で何をしたんだい
「墓碑銘は」
直面では舞わぬ人
つぶさにかげり てる
よ と薪の燃ゆる
「常」
瞼を閉じて息を吐く
朝は藍色に更けていく

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