失われていく題名/秋津一二三
家の表札には
不在と張り紙されている
棲んでいるのは不在さん一家
「不在の栖」
紐だけが頼りの二人三脚
紐を解けばすぐゴール
誰かから 別れたら? って言われたい
「僕がいなくても歩いていける。 君は」
失っても慣れるだろう
から約束に使いましょう
私たちは余剰で誓い合う
「利かぬ腕の小指」
正方形に彩られた日常と
中心を見失う昨今と
ためらいがちに生きている今に
「傾斜を観た」
自己とは不確かなものよ と女
不確かだから愛しあうのさ と男
希望は果てにもない
「失語」
趣味への問いの答え
御社にとってとても役に立つ発想だと
自負する気もなく
「山
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