失われていく題名/秋津一二三
 
物の正体と 得られる物の差違に
「私を寄越せ」
後ろ歩きの人生に
希望など夢みる
高揚感は
「半歩後ろ」
色は大切かい
それで狙われるのを
差別と呼ぶのかい
「黒兎と白烏」
瞳孔は光を捉え
光の何たるかを捉えない
それは君
「さらばえた子」
死を認める
死を思ふ
個であれど個で終わらぬよう
「看取り人」
下した手は流れに
血が左様であるように
無意味と
「水を梳く」
堰をきる奔流
洪水のようにと荒ぶ
耳は源流を知らない
「口腔だけが」
歩いているのは僕
の中 優しく風化する
雨が降ればいいのに晴れ
「君、消えていく道」
雨滴に向かう夜

[次のページ]
戻る   Point(0)