春を告げる/亜樹
 
ようとすると笑われる。「イタドリだよ。知らんの先生?」山の紅葉にも負けないほど頬を赤く染め、笑う子供に進められるまま、口にした雑草はひどく酸っぱい味がした。
 渋柿を食べさせられたこともある。クラスの一人が家で採れたのを持ってきたのだ。騙されたわけではない。はじめから「渋柿を持ってきた」とその子は言っていた。他の子どもは頑として口をつけなかったのを、面白半分に齧ってしまったのだ。その結果、口の中が痺れるような嫌な渇きが、しばらくの間定子を苛んだ。「渋い」という味覚をそのとき定子は始めて知った。
 そうして、昨日、放課後に彼らは口々に言った。「明日は雪が降るよ」と。
「なんでそんなことがわかる
[次のページ]
戻る   Point(2)