春を告げる/亜樹
 
かるの?」
「やって、三回目やもん。白くなったでしょう?あのお山」
 そうして彼らが指差すのは町を見下ろす、遠い高い山だ。
「あの山にね、三回降ったら、里にも降りてくるんよ。雪が」
 その夜定子は深深と降る雪の音を聞いた。

 朝、カーテンを開けると、予想に反して積もってはいなかった。しかし、空はどんよりと暗い。重たいにび色の、耐えるような色。
 おそらく、しばらくすればまた白い風花が舞うのだろう。窓の硝子の端が白く凍っていた。
 定子の部屋の出窓には、何も生えていない白いプランターがある。種は先日蒔いた。この花が咲くのはいつだろう。今日学校に行ったら、子供たちに聞いてみるのもいいかもしれない。不意にそんなことを思った。


 子供たちの暦の通りに訪れた冬は、子供たちの暦の通りに去るのだろうから。
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