菱型の季節/Utakata
 
を一枚ずつ剥いでゆく
     満月水銀灯の光の中で終らない物語を続けるアルタイル
    「本当はみんな死んでるような気がする」と屋上の風が言う
    アンダルシアへ行った友達が石灰石の下へ埋葬された絵葉書を
   飛ばした紙飛行機が空を埋め尽くした夢を映し出すラムネ工場の跡
  最初にさよならを告げた瞬間に世界のどこかで終わりが訪れると知った
   向日葵の花弁を一枚ずつ千切りとりながら女たちは巡礼を続ける
    嘘をつく度にその子の口からは小さな金魚が滑り出ていった
     台風の来た日に透明な鋏で髪の毛を切っては記憶を悼む
      やわらかな骨を綴じこんだまま水
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