菱型の季節/Utakata
 
ま水溜に浮く蜻蛉の羽
       うすみどりの風のなかに水母が溶けた夜明け前
        ずっと遠くの祭囃子を耳のおくに閉じ込め
         頑なに結ぶ掌でそれでも溶けつづける
          二つの檸檬の乗る文机の上の手紙
           土に埋めた子犬が骨になる日     彼岸花の傍
            雨の為に泣いた筈だった       嗤う亡霊
             狂った時計を合図に         瞬いた
              歩き出した九月           赤い
               折畳まれて             魚
                ねむる
                 魂

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