卒業/Utakata
ものにはあまりにも多くの記憶が染み付いている
友達と永遠に別れるように
あるいは自分の身体を切り取っていくように
それでも最後にはそれら全てを
地面に掘った大きな穴の中へと埋めてゆく
穴を埋めた後で
その場所に苗木を一本植える
もしも樹に成長したそれを見る日があったとしても
地面を掘り起こすことができないように
***
体中から生えた電話線を
よく研いだ鋏で一本ずつ刈り取ってゆく
一度しか使わなかったものもあれば
その上で無数の会話を交わした線もあった
切り取る前に
ひとりひとりにさよならを言う仕事を済ませてゆく
足元に千切れた鉄線がはらはらと落ちる
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