子供たちが鳥に戻る日(風の強い日)/Utakata
やく辺りを見回して人気のないのを確かめると
彼はおずおずと風上に向かって両手を広げる
羽根は生えない
すぐに腕を縮めてきまり悪そうにひとり笑う
彼の瞳の中を飛び回る子供たちが行き来し続けている
***
もうひとりの男
意味のない言葉を叫びながら
よじ登った鉄筋塔から飛び降りる
落下の最中に彼は激しく両腕を振り回す
似たような赤い染みがアスファルトのところどころに付いている
子供たちが空から甲高い声で笑う
4.
風の強い日
雲が生きているような速さで空を横切っていく
(なんだか今日は
地球の自転が逆になったみたいだ)
大人たちがとうとう彼らに石を投げ始
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