まよなか/Utakata
 
球体が ゆっくりと砂浜から起き上がる
目覚めている生物の誰一人に見られることもない
眼のない彼らの身体が吸いつけられるように空のある一点を向く
海底に眠る鯨だけが夢の中でその光景を眺めている
彼らはまた かつて海を捨てた動物たちの遠い未来も夢見る
月のある方向に向かって 何百という水母たちが空へと上がってゆく
満潮の波がひときわ強く大地へと押し寄せる


まよなか
とても飢えたなにかが
夜の冷蔵庫の中に巣食っている
それは稼働音にまぎれて小さな低い呻き声で鳴く
片隅に置かれた二つのオレンジがかすかに青褪め
お互いに目配せをしてからゆっくりと息を殺していく
自らが閉じ込
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