いただきます/亜樹
れど、そこにまとわりついた偽善の匂いがどうにも苦手だ。それに、焼肉は美味しい。豚も。牛も。魚も。鯨も好きだ。蛇だって食べたことがある。まずくはなかった。そういえば犬も美味しいらしい。一度食べれば、私の境界線もまた変化するんだろうか。
けれど、いくら思ったって私にはポチはたべれない。たべれないと、思いたい。町行く飼い犬を見て、水族館で鰯の群れを見る感覚で、『美味しそう』と思う人間にはなりたくない。これもきっとエゴだ。
魚はさばける。でも牛や豚は自信がない。姉はしばらく畜産の牧場で働いていた。勤めはじめてしばらくは、青い顔をしてかえってきていたが、一定期間過ぎるとけろっとした顔で夕飯のポークソ
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