いただきます/亜樹
らば、おそらくなんの迷いもなく箸をつけるだろう。
飼ってるか否か、という単純な問題ならばよいのだけれど、悲しいことに我が家では鶏も飼っていた。鶏卵用の鶏だが、年を取ると卵を産まなくなる。そんな鶏は父が土間で絞め、その日の食卓にのぼった。年をとった鶏はあまり美味しくなかったが、一応私はそれを食べた。臭みのある、硬い肉だった。
鶏に愛着をもっていなかったわけではないが、どうしても彼らは『食料』以上の存在にはなりえなかった。
TVでは、『この肉は、1頭1頭名前をつけ、愛着をこめて育てる○×牧場のものです』などと紹介しながら、焼肉の映像が流れる。それを見ながら、「可哀想」と言うのは簡単だ。けれど
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