クマメモ1/あすくれかおす
あげなさい
君がいつか
歌を歌いたくなるときのために
あらゆる本当や
あらゆる嘘を包んでいきなさい」
鉄棒とわたししか見えてないはずなのに
あのシロクマはこの世界についてよく知っていた
あれからわたしは愛を覚え 時に忘れ
高いところを見上げるときの空っぽが得意になった
やがてわたしは雲になっていくのだ
広大な世界をたゆたいながら
五線に散らばった音のかけらを集めて
やさしい雨のように
この世界に降り注がせる
鉄棒はわたしの雨粒で
茶色く年をとる
シロクマはシロクマのまんま
もうひとことも喋らないだろう
そしてこうもり傘を
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