目玉焼きのつくり方/小川 葉
と言うと
妻が僕の腕を引っ張って
泣きそうになってる
「それでは小川さん」と
店員が勧めるガステーブルを
もうそれ以上何も言わずに
奨められるがまま買った
カード払いだったので
僕は「小川」とサインすると
店員がフルネームで、と言うので
しかし僕は忘れてしまって書けなかった
「それではお客様」と店員に案内されて
僕は再び「お客様」になって
ちょっとした手続きを済ませて
小川さんはやっと
ガステーブルを手に入れた
電車で帰っていつもの駅で降りた
壁をせつなく見つめて妻は
「ここに毎朝ガスみたいに人が集まるのね、あなたも」
僕は少し黙って
「で
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