目玉焼きのつくり方/
小川 葉
「でもそうでもしなきゃ」
と言ったまま何も話さなかった
「もっといい作り方があるはずなのに」
妻もそう言ったまま
もう何も話さなかった
ガステーブルが届いて
今朝も変わらずに目玉焼きを焼く
目玉は久しぶりに左に寄らなかった
僕らは目をそらす必要がなくなったので
久しぶりに真っすぐ見つめ合う
妻が僕の下の名前を呼ぶ
僕も妻を下の名前で呼ぶ
今朝はまたやけにひどい
ガスに霞む駅に向かって
僕は妻に見送られて
消えるように手を振った
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