目玉焼きのつくり方/小川 葉
元栓を開ける
妻の背中がさみしくて
それでも朝は訪れる
目玉焼きを焼いたら
少し黄身が左に寄って
それを僕が真似る
どこ見てるの
ため息混じりで聞く妻の声も
どことなく左に寄っていて
右利きの二人はテーブルで
うまく黄身を割れないでいる
駅にはたくさんの人が集まる
まるでガスのように
火気厳禁の静寂さはきっと
これからはじまる一日のため
さびれはじめた駅舎の壁が
少しせつなく傾いてる
ガステーブルが壊れたので
街まで買いに行く
電気屋の店員が何度も僕を
「お客様」と呼ぶので
あんまりじゃないかと思って
「僕にだって名前はある」と言
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