批評祭遅刻作品■時を止める?「殯の森」と「ノスタルジア」における垂直のメタファー/渡邉建志
 
殯の森」を見ながら、大江健三郎が武満徹に語りかけていたこの「縦に拡がるメタファー」ということを強く思い出さずにはいられなかった。「殯の森」はストーリーとしてはややリアリティに欠け、横の展開で人を惹きつける映画だとは言いがたい。しかしながら、ところどころに「縦」の瞬間が露呈するところにこの作品の魅力がある。
最後のシーン。主人公の初老の男性が穴を掘る。とにかく掘り続けている。なぜ掘るのか分からないまま、われわれは彼が穴を掘り続ける行為を見続けることを強要される。見る人によっては、単に退屈でつまらないシーンかもしれない。しかし、その行為には、無目的的に見えるがゆえにかえって何らかの彼にとっての切実さ
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