批評祭参加作品■食い違う夢 −『私たちの欠落(夏の日の)』藤丘 我流読解−/大村 浩一
 
がある」
 そしてこの作者の表現力の真骨頂は、埋もれた記憶のことを、熱心な詩の読
者の脳裏へ一発でイメージさせる「栞を置いたまま」という部分である。

#急な雨の日の窓硝子に反射する
#輪郭のぼやけた
#あなたかもしれない横顔を見ることがある
#
#遠い夏の陽射しの
#揺れの中に置いてきてしまった
#あなた
#かもしれない面影を
#瞬きの合間に抱きしめることがある

 第3、第4連どちらの連も「あなたの」の断定ではない点に注意して欲しい。
「あなたかもしれない」ということは実は「あなたではないかもしれない」と
いう事なのだ。
 私はあなたを愛している、と言いながら
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