批評祭参加作品■食い違う夢 −『私たちの欠落(夏の日の)』藤丘 我流読解−/大村 浩一
 

が左右し得る濃密な関係だと想像できるし、「いつかの夏」からは世間で言わ
れる「一夏の過ち」も連想される。
 いやこの「いつかの夏」はそんな陳腐なものではないかも知れない。もっと
内面的なものかも。外からはそう見えても仕方の無いことだったかも知れない
が。…そんな弁明を加えたくなるのは、この2連の整った言葉遣いに、この詩
の主人公の鋭い決意のようなものを、大村が感じ取るからだ。
「互いを必要としながら」「それぞれの場所で」「飲み込むふりをする」親密
さを擬態するそれぞれの人影の、何と孤独なことか。「それでも私たちは真実
を口にしない」「私たちの日常には触れ合うことを拒む痛みがあ
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