批評祭参加作品■食い違う夢 −『私たちの欠落(夏の日の)』藤丘 我流読解−/大村 浩一
ない、と思った。ならば第一連の描写は、夫婦の寝室ではなく夕
暮れの病室、という事になる。
「喉は閉じたまま」が深い沈黙を意味するだけならば病気ではないが。この場
合には「赤血球を分離させて行く」のは主人公自身の身体の細胞という事にな
ろう。
ここに出てくる「白い雨」とは何だろう。「夏の/ぬるい海へ」と「私たち
の昼」を浸食して押し流していくもの。記憶や意識を解かして曖昧にしていく、
日常を流れて行く時間(の浸食作用)のことだろうか。
#月の隠れた夜にあなたと私は
#幾つかのガス灯を数え
#カバンの中の折り畳み傘をひろげて唄を歌う
#
#朝と夏の雨は混ざらない
#私た
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