批評祭参加作品■時が終る、詩が始まる/岡部淳太郎
 
から、あれが変化のきっかけであったと自覚されるようなものであったなら、それもまたひとつの「揺らぎの時」であったのだ。
 人ひとりが持つ心の領土はそれほど広くない。どんな人間にも限界というものがある。その限界を越えるきっかけとして、「揺らぎの時」はやってくる。それは頼んだわけでもないのにある日突然やってくるものだが、それによって限界の範囲はほんの少し広げられる。その体験が「揺らぎの時」と称されるほど時に苦痛や非現実感をともなうものであるのは、そこで古い自我がいったん死んでいるからだ。それが展開する時の一種の心象として、苦痛や非現実感などが現われる。そこで古い時と新しい時の交代が起こる。こうしてひと
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