批評祭参加作品■時が終る、詩が始まる/岡部淳太郎
ひとつの通過儀礼のようなものを潜りぬけた後、ある種の人々はそれまでとは違う何かを探そうとする。それは詩であったり他の芸術であったりするかもしれないし、あるいはまったく別の登山をするとか放浪の旅に出るとかいったことであるかもしれない。ともかく「揺らぎの時」の後の人は新しい自分にとまどっていることが多いので、それを確かめたり手なずけたりすることで気持ちを静めようとする。また、それまでとは違う新しい自分に変化を遂げてしまったからには、それ以前とそれ以後とではやることへの態度や質といったものにも変化が起こらざるをえない。そうして人は「揺らぎの時」を迎えるたびに、自分を失くしてはまた作り直していくのだ。
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