批評祭参加作品■時が終る、詩が始まる/岡部淳太郎
 
のだ。あれほど大きな揺らぎを潜りぬけてしまったからには、もうそれ以前の自分には戻れない。ただその揺らぎを受け止めて、その結果として変ってしまった自らの生を歩いていくしかないのだ。
 ここでいう「揺らぎの時」とは、何も死などの重苦しい出来事に限らない。思春期の淡い片恋でもいいし、結婚や就職などのめでたいことでもいい。誰かから精神的影響を受けるとか教えられるとか、あるいは引越や旅行やいじめや病気やその他もろもろ。時が常に変化の連続であるとするならば、普段は些細な変化に気づかなくてもふとしたきっかけで目の前の変化に気づき、それによって自らが変化するということもありうる。その時に、あるいは後になってから
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(7)