接触/相良ゆう
もの」と「ことば」の関係性を創造し、それを忘れないでいることが不可欠である。それゆえ関係性を成り立たせる最も重要なものは「記憶」である。「記憶」こそが人間の人間たる由縁である。
現実の世界の事物との関係交渉の基本は接触であった。では物語の世界の事物との関係交渉の基本は何であろうか。実はこれも接触である。しかし物語の世界における接触は、現実の世界における接触とは性格をことにする。なぜなら概念や観念には物質のように明確に思える境界がない。ある概念がある概念を含んでいることもあれば、全く対立するものとして接触していないように思えるものもある。物語の世界における接触とは「同一性」である。「もの」の世
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