ケータイ小説の岸辺で/小川 葉
 
 
1.小説

彼は読む
本の向こうから
呼ぶ声が聞こえる

空に栞がさしこまれ
訪れる夜も
失うことなく

示された意味を
自らの言葉として
世界に生きる

やがてそれは
共鳴し合い
彼らの声とわかる



2.ケータイ小説

彼女は読む
窓の向こうから
呼ぶ声が聞こえる

心に栞をさしこんで
訪れる夜を
美しく汚す

示された言葉を
自らの意味として
世界に生きる

やがてそれは
通り過ぎていく
彼女らの声にかわる



3.現代

人は読む
暗闇の向こうから
呼ぶ声が聞こえる

希望に栞がさしこまれ
[次のページ]
戻る   Point(1)