セキュリティ・ロック。/榊 慧
 
ちでひたすらもがくそうした俺を、笑うだろうか。純情廃棄、浪漫殺伐。嗚呼、かわいげの一つでも俺にあったなら。ただ醜いだけなんて、せめて、功名的な意味があればよかったのでしょうけど。
脆くて、薄い嘘で出来た芸術のようなものはいらない。俺が思うに、悲劇は劇と付くくらいだからドラマ性がないと成り立たないと思う。ドラマ性のある不運は不幸となって、人に見つかってしまう。そして誰かがそれを慰めて癒して、それで、はかないその人は、ゆるゆると幸せになっていくというのが、定説だ。いや、俺はそんなに人の人生を眺めてきたわけではないけれど、なんとなく、そういうふうになって欲しいって、思ってる人が多いことだと思う。灼熱、
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