一月一七日が近づくと/kaori*
 
 つぶれてしまっただろう 勤労少年だった
父 新聞配達中に走った生田の路地裏 レコードを買
いにいった元町の中古屋 父はどこか 通り過ぎて
いく時間 名前のあるなしを問わず  数えきれな
いものが 流れていく 通学電車から 見えた須磨の
海 に 揺らめく 朝の光 変わらず 忘却から 抗っ
た 痕跡を 浮かべている

一月一七日が近づくと 図書室から見た神戸の街を
思い出す 中庭の しだれ梅 ソメイヨシノ のず
っと向こう 家やビルや阪神高速の向こう 瓦礫や
砂塵を越えて 何隻もの船が 行き交う 凪いだ海
空との 境界線を 忘れて どこまでも 続いていく 
生きていく 美し
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