冬の日の夜/龍二
視する事も無かったと語っていたと聞いた。「空気」の両親は泣いていた。
真冬の夜道を方向など考えずに走り出す。顔や、首筋が熱を持ち、肺や呼吸器が焼け付く様だった。朧月も、静かな川面も、何もかも感じられなかった。何かから逃げ出したのか、何かを追いかけたかったのかも分からない。
でも、走らないといけない。
誰も私を許さないだろう。記号は誰にも覚えられはしない、でも誰も私を忘れないだろう。
「何にも無かった」と、本当に思っていた。「誰もいなかった」と思っていた。それでも誰も許しはしない。
「あなたのような優しい子と一緒のクラスでよかった」と、「空気」の母親は言っていた。
冷たい
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