冬の日の夜/龍二
 
たい土を素手で掘り進める。霜が降りた河川敷の土が、稀に指先に噛み付いた。
記号の数だけ、数え切れない程の、墓標が必要だった。数え切れない程の、感情が必要だった。子供の頃の自分が、暗い部屋の真ん中で笑っていた。
世界が表情を取り戻したのかも知れない。色彩を取り戻した扉の向こうで、私を抱きしめた。
赤い色彩を纏った掌で、土を盛った。突然、背後から「嘘吐き」と言われ、振り返る。

「もう、俺を」

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