冬の日の夜/龍二
なった。「空気」と、群像。それだけでしか無かった。
翌日、「空気」はいなくなった。何処にもいなくなった。もう一度、誰かが穴を掘る必要があった。
きっと、何も思わずに、冷たさに耐えながら、指先の感覚を殺して、体がすっぽりと消えてなくなるだけの穴を彫り、歪んでいく世界に目を凝らして帰っていくんだろう。
記号は、ケタケタと音を立てて震えた。嘔吐感は、もう無かった。真っ暗な部屋で震えていた、子供の頃の自分を殺してしまった。
だから、何も感じずに、忘れる事が出来るのかも知れないと思っていた。
「空気」の両親は、何故か私に感謝していた。「空気」は、私だけが「空気」を影で蔑む事も、疎む事も、無視す
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