冬の日の夜/龍二
 
、何かを裏切り続けている。本当に抱きしめてやりたいのは、世界を失い、真っ暗な狭い部屋に閉じ込められた子供の頃の自分だった。

新しい「空気」は、泣いていた。新しい「空気」を手に入れた記号の集合は、形容できない形をしていた。
眉をひそめて、入りかけた教室を後にし、トイレで嘔吐した。
何が原因か、わからなかった。教室では今日も何も無かったし、誰もいなかった。
記号の集合が手に入れた幾何学的な模様は、神経を細切れにされ、燃やされている様な気持ちにさせる模様だった。
あの顔にべったりと張り付いた模様を見ると、心を隅々まで鉛筆で灰色に塗りつぶされる様な感覚に陥った。
本格的に、人々が記号になっ
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