冬の日の夜/龍二
かなくなっていた。
「空気」と呼ばれている男がいた。「空気」を阻害する人々がいた。「空気」に対して、手を差し伸べない人々がいた。
影で「空気」を蔑む人々がいた。でも、それらは同じ記号でしかなかった。何も区別する手段が無かった。
細胞分裂を繰り返す微生物が、違う微生物と結合して、また分裂を繰り返し、淘汰されいく様子に、それは似ていた。
彼らは、そうは思っていないのだと言う。何が何なのか、大人になるにつれて、わからなくなった。
何週間か後に、「空気」は忽然といなくなった。人々から「空気」は最初から無かった物として扱われた。
そして、また新しい「空気」が生まれ、少しだけ、胸が苦しくなった。
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