冬の日の夜/龍二
地表に落とす。何事も無かったかの様に、汗一つかいていなかった。ただ、膝と手に、冷たく残る遺言を残すばかりだった。
白い息が、街灯の光を歪ませているのか、景色の乱反射する光を捉えきれずにいる。にじんだ紫の曇り空を見上げた、そこには何も無いと知っていた。
教室には誰もいなかった。何事も無かった。人々が懐かしむ光景なんて、何処にも在りはしなかった。
繰り返される食物連鎖と、真っ黒に塗りつぶされた画用紙を見る様な感情、何も無い場所に、何かがあるかの様に騒ぎ立てる群像があるばかりで、子供の頃は見えていた人間の顔が、無くなっていた。
体が大きくなるにつれて、何が記号で、何が実像なのか、区別がつかな
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