永遠の懐胎/鈴木
 
 一、チアノーゼ

 国道の縁石にふたり座りこんでいたとき、アイビーは「美しいものが好き」って歌った。濡れた唇の築く透き通った楼閣をベンツが突き抜けて、砂塵に僕ら咳き込み涙目になりながら排気ガスでうがいした。朽ちかけの自転車が僕の友達、天国へだって行けるんだ。だけど鉄さび醜いって彼女は言う。

 アイビー、僕が欲しいのは。

 ゲルマニウムに包まれて血液が逆流を始めた。腸を構成する赤が岩紅から鉛丹に変わり、口内で粘膜が蕩けて舌に絡み温かな垢を生み出していく。呼吸を止めて二分、息苦しさに耐えかねて肺を叩くと胃液がこみ上げた。刺激的なシチューの中、ブロッコリーの歯ざわりに僕は恍惚を覚
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