鱗音/
鴫澤初音
テーブルの角に頭をぶつけるより先に
その痛みを知っていた
目頭が熱くなるより先に
その悲しみをより深く飲み込んで
咽喉の隙間に落ちていかせた こと
魚が泳いでいる 穏かに
いつのまにか 水のはられたバスタブに
きらきらと 鱗が翻っていた
幾つも 幾つも蛍光灯に反射して
美しかった
生きている 生きていく その美しさ
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