鱗音/鴫澤初音
 
 言った
           (それは傷を癒せないよ)
            あなたは 吐き出すように言った
           (僕らの傷が癒える時は僕らが死んだとき
            だけだよ なんだそんなことも
            知らなかったの 君は)
            唇を噛んで眼を瞑った
            呆れたあなたが乱暴に髪を掴んで
            頬に頬を擦りつける 優しさに
            
            いつか 幼かったころも今も
            変わらず思っていたこと
          
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