兎/鴫澤初音
 
その高校の前を通り過ぎて、
そんな会話を聞いてしまったからには、
かわいそうでビラをもらわないわけにはいかない。


だけどたぶん電話はしない。


* * *


サチエはその朝奇妙な夢を見て起きた。

夢、桜が満開の中を雪が降り頻り、
隣にはいつもの如くノワケがいた。
ノワケは微笑を湛えながらサチエとともに
傘もささずに雪の中を歩いていて
唐突に倒れて嘔吐し失禁して
仰向けに震えているのだった。
雪が二人の上に、どんどんと積もっていた。
そこで、終わる。

サチエは、目覚めてからもう一度
ベッドに横になり、眼を閉じた。
続きを見たい、寒さの中で雪
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