重ね/鴫澤初音
 
 笑った口元から

     ぽろぽろと 消えていく 影  軒下の緑に水をやっていた


  愚図愚図 していた 

   教科書を開けようとして 糊で貼りつけられた目蓋が

           泪で腐って 黄色く変色していた 膿が

     唇まで 垂れていく


  

  朝 誰かがゆっくりと 頭を下げる 黒い

    服を着て  (おはようございます)と

    唇をそっと動かすのを 見る  三軒先



  朝日が その時も 射していて

 
   白い花が はらはらと 音もなく 落ちていった 足元

    憶えていて
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