重ね/
鴫澤初音
笑った口元から
ぽろぽろと 消えていく 影 軒下の緑に水をやっていた
愚図愚図 していた
教科書を開けようとして 糊で貼りつけられた目蓋が
泪で腐って 黄色く変色していた 膿が
唇まで 垂れていく
朝 誰かがゆっくりと 頭を下げる 黒い
服を着て (おはようございます)と
唇をそっと動かすのを 見る 三軒先
朝日が その時も 射していて
白い花が はらはらと 音もなく 落ちていった 足元
憶えていて
[
次のページ
]
戻る
編
削
Point
(4)