重ね/鴫澤初音
 
  痣が むこう三軒隣りのお姉さんの腕に塗り込まれていた
  
  (おはようございます)

  そう 言わずに  黙礼を交わし合って 互いの痣を青く

                          見つめあう

  朝 白い花がはらはらと二人の間で 音も 

             たてずに 落ちていった 

      学校へ行く 鞄を肩にかけてそれが ひんやりと

              まだ少し 寒い空気に湿っていった

  お姉さんは 不図微笑んで 唇の端にできた血の固まりを

  ぽろぽろと落とす (夜には)

  お姉さんの悲鳴を 
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