底/アンテ
 
平然としている
換気扇そっくりな顔が
天井からこちらを見下ろしている
身体が重い
だんだん沈んでいく
蛇口みたいな
明かりみたいな
ドアみたいな


じっとこちらを見ている
水面がゆっくり上がってきて
視界を呑み込む
浮遊感
髪が舞う

なにも感じなくなりたかった
理由
本当はわかっていた
だれかの体温をいつも
そばに感じていたくて
でも人と関わるのは嫌で
自分で自分に優しくする
ためには
そうするしかなかった
なにも求めない
だれも望まない
でも独りにはなりたくない
そう
窓がいっぱいある
長い長い回廊
に一人で暮らしていたかった
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