底/アンテ
 
った
窓のそとで
人がたくさん暮らしている
でもだれも入ってこられない
そんな約束
が欲しかった

見上げると
水面の向こう側
光の合間で揺れながら
浴室の輪郭は崩れてしまって
もはや識別できない
耳のなかを音がくすぐる
気泡がのぼっていく
光が弱まって
影の領域が広がっていく
このまま沈みつづけて
いつか
底にたどり着くのだろうか
とても静かだ
暗がりのなか
なんだろう
あたしのおなかが
ぼんやりと光っている
手をのばす
指で撫でてみる
もしもし
もしもし
たしかに
あたしを呼ぶ声が
おなかの内側
もしもし
薄い肌を隔てて
あたしの名前を
くり返し呼ぶ
懐かしい声
もしもし
あたしは
うなずく

あたしは
何度もうなずく



                          連詩 観覧車




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