夜の魚/亜樹
 
ふかいくらい うみのなか
ほそながい 魚がおよぐ
はがれおちた うすいうろこが
キラキラと かがやきながら
底のほうへと おちてゆく

目をつむると ズブズブと
体がしずんで しまうので
黄色い目を 見開いて
魚は尾っぽを はためかす
喝と 見開いた目玉は
それでも あたりが
あんまり あんまり
くらいので
ろくに何も うつさないまま
しずみたくない 魚はおよぐ

冷たいから 厭なのか
問えば そうではないという
底が見えぬのが 嫌なのか
聞けば そうではないという
底のほうは じつのところ
ほのかに 明るい
はがれおちた うろこがつもり
きらきらと
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